2つの森村誠展に見る「都市」のイメージとは?

 8月の下旬より、
 森村誠さん(1997年絵画専攻卒)の
 個展「OTW|THC」を、
 大阪の2つのギャラリーを会場に
 2期に分けて開催しています。

 西区のCalo Bookshop & Cafeにて、
 プレ企画〈THC〉を9月9日(土)まで開催したのち、
 現在は此花区のthe three konohanaにて、
 新作展〈OTW〉を10月22日(日)まで
 開催しています。


森村さんは、
書籍や地図などの印刷物を用いて、
それらの中にある特定の文字や情報を
修正液で消したり、カッターで切り取ったり、
時にはそれらをパッチワークのようにつないだりする
膨大な反復作業で制作する作品が特徴です。
近年は、さまざまな「都市」の概念を
考えることに重きを置いた作品を制作しており、
今回の2つの個展では、対照的な「都市」のイメージを
それぞれ見せることを狙いとしています。

先に開催した〈THC〉展では、
アメリカでのアーティストインレジデンスから帰国したのち、
2014年頃に制作していた一連の作品を中心に発表しました。
 
 ニューヨークの地図から「THC」の3文字を、
 東京の地図からは「大」と「麻」の2文字を
 それぞれ取り出した作品で、
 洗練された大都市のイメージの背後で
 共存しているアンダーグラウンドの世界を
 象徴的に表現しています。



また会期中には、
これらの作品の着想となった出来事をアレンジした
森村さんのパフォーマンスも実施しました。
紫陽花の葉を混ぜた巻きたばこを森村さんが作り続け、
希望者はそれを実際に吸うことができるというものでした。
巻きたばこの製作行為は
森村さんの作品の手仕事にも共通しつつ、
一方で一見ありふれた日常的な(解釈によってはあぶない・笑)状況を
パフォーマンスとして提示し、
現代のパフォーマンス表現の一つの試みとして、
そのあり方に問いを投げかける内容にもなりました。
 

 そして、現在the three konohanaで開催中の〈OTW〉展では、
 2年前から取り組んでいるさまざまな小さな地図を
 縫い合わせて架空の都市を作り上げる
 〈OTW〉シリーズの最新作を展示しています。
 
 




現在も街の至るところでは、古い建物が解体された後に
新たなビルやマンションが建てられ、
また建物はそのままでも部分的にお店が次々と入れ替わるなど、
断続的な「都市」の開発は並行して
その景色や地図をも変化させていると言えます。
私たちが久々にとある目的地に行こうとしたときに、
目印としていた建物やお店が無くなっていたりして、
道に迷うシチュエーションに出くわす場面も
多々あると思います。
つまり、都市開発による地理の変化の後に、
私たちの脳内地図が遅れてパッチワークのように
更新されていくという考え方が、
今回の最新作の主要なテーマになっています。

「OTW」は「on the way」の略語、
日本語では「(目的地の)途中」という意味です。
こうした部分的な物事の絶え間ない変化や更新というものは、
現実世界ではもちろんのことですが、
とりわけ現代のインターネットの世界ではより顕著に現れています。
アナログな行為と素材で制作している森村さんの作品が、
かえってデジタル社会のイメージにも通じ、
さらに変容する「都市」のイメージとも重なっていく構造の中に、
美術表現の現代性の面白さを
感じ取っていただければと思います。
 
***
森村 誠「OTW|THC」

[Main Exhibition]  〈OTW〉
会期:2017年9月16日(土)-10月22日(日)
開廊時間:12:00-19:00
休廊日:毎週月・火・水曜
(※ 9/18(月)、10/9(月)の祝日は開廊します)
会場:the three konohana
(554-0013 大阪市此花区梅香1-23-23-2F Tel:06-7502-4115)
http://thethree.net/


[Pre Exhibition] 〈THC〉 【終了しました】
会期:2017年8月29日(火)-9月9日(土)
会場:Calo Bookshop & Cafe 
(550-0002 大阪市西区江戸堀1-8-24 若狭ビル5階)
http://calobookshop.com/
 

(山中俊広(the three konohana代表、
大阪芸術大学芸術計画学科非常勤講師)


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